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結婚記念日に思う事。

今日4月15日は、テルッツとワシの27回目の結婚記念日だ。二人は、二人の間に発生する記念日の朝、例えばお互いの誕生日とか、とにかくどちらかが目覚めると、「おめでと。heart04」って言う。記念日の朝だけは、「おはよ。lovely」ではない。去年26回目の時は、同じ朝を迎えられず、ワシが仕事の合間に病室を見舞った時、熱い抱擁を交わした。勿論、「おめでと。heart04」って、言い合った。happy01 最近思う、振返って見ると二人は、新婚当時より26年の歳月を経て居た時の方が、仲が好かったと。think
昨夜、布団に入ってから考えた。テルッツとワシって、どんな夫婦だったかと。具体的には書けないが、漠然と、こんな夫婦では?と思える事が頭に浮かんだので、ちょこっと書いてみる。
では、御伽噺風に・・・・・。

この町には、とても大きなお屋敷がありました。それはそれは大きくて町の半分を占める程の大きさでした。噂では、綺麗に整理された森や芝生の庭園、その中を小川が流れているとの事でした。町の人達は、実際に見た事はありません。皆が皆、貧乏で忙しく働いていました。誰もが皆、平等に貧乏だったので、平和で明るい町でした。別世界のお屋敷の事など、誰も気にかけませんでした。ただ、この町の駅に向うのは、皆一苦労でした。なんせ、この大きな大きなお屋敷の外側を、ぐるりと回り道しなければならないのですから。
長く悲しい戦争がありました。この町は、戦火を免れました。この大きなお屋敷が、盾になってくれたからでした。戦渦にあったお屋敷の住人がどうなったかは、誰も知りませんでした。ただ、主をなくした事だけは、はっきり分かっていました。
そうして、十年とちょっとが経った頃、この町に一人の男の子が生まれました。そしてまた十年、すくすくと育った男の子は、今はすっかり荒れ果てた、お屋敷の跡を遊び場として、それはもう活発過ぎるぐらいに遊び回っていました。子猫を放り投げる、野良犬を追い回す、釣り上げたザリガニを何十匹も剥き身にする、お寺の壁に泥団子を投げ付ける、かえるをふんずけてみる、トカゲを電線に投げ付けてみる、親に、「可哀想な事は、やめなさい!」と、さんざん言われても、言う事を聞かない少年になっていました。
ある日この町に、遠い西の町から一人の女の子がやって来ました。親にも、言いたい事を言えない様な、引込思案の可愛らしいおとなしい九歳女の子でした。言葉が違うので、なかなか友がちに馴染めずに、いつも一人で遊んでいました。
夏休みのとてもとても暑い午後、いつもの様に小動物や虫を捕まえて、自分の実験道具にして遊んでいる男の子の後ろから、「可哀相やないの!」と、小さくてもはっきりとした声が飛んできました。振返るとそこには、おかっぱ頭に麦藁帽子、母親に縫って貰ったであろう小さな花柄の丈の短いワンピース、手には真っ白な清潔そうなハンカチを握り締めた女の子が、泣き出しそうな顔で立っていました。
女の子は、不思議でした。人には言いたい事も全く伝えられないのに、目の前の男の子には、初めて見た子なのに、胸の中の事を思わず言えてしまったから。
男の子も不思議でした。親に言われようが響かない自分の胸に、今まで経験した事の無い何かは解からないが、耳からではなく心で聴こえた様な、「可哀相やないの!」だったのでした。
それをさかいに男の子は、変りました。それをさかいに女の子は、この男の子だけには、何でも言える様になりました。女の子は、この男の子を通して友達と話せるようになりました。男の子は、命の大切さを教えられました。二人は、一緒に遊ぶ事が好きになりました。

荒れ果てたお屋敷の跡は、この町の駅へ向う近道になっていました。かつての小川は、もう蛍が住めない程汚れ、川底には糸ミミズの塊がゆらゆらしていました。整えられた庭園の木々も、すっかり雑木林の有様。しかもその奥には、防空壕の廃墟があるとの事で、近道を行けるのは、度胸の付いた大人だけでした。このドブ川を越える橋は、このお屋敷にはありませんでした。だから、ドブ川をひょいっと、飛び越えられる大人だけの近道だったのでした。
小学校の六年生でも、このドブ川の飛び越えに成功した者は、五本の指で数えるほど。しかも、その先の防空壕の廃墟を抜ける事など誰も出来てはいないのです。だから、近道を抜け駅に辿り着けば、一躍ヒーローだし大人の仲間入りができるのです。学生のお兄さんやお姉さんは、いとも簡単に通学していくのです。
夏の終わり、男の子は女の子に、「一緒に飛ぼう。」と申し出ました。「僕が手を繋いで、引張ってあげるから大丈夫だよ。」 男の子は、何故一人で飛ぼうとしないのかは分りませんでした。でも、二人なら怖がらず、飛べるような気がしたのです。「うん。」と、女の子も迷う事無く返事が出来ました。いつかきっと、「一緒に飛ぼう。」と訊かれると、予感していたのかも知れません。
暑い暑い夏の終りの昼下がり、当然、親にも告げず、かつて芝生だった原っぱの岸から、その先に薄暗い雑木林の見える岸に向って、しっかり手を握り締め合って、助走を始めました。
二つの運動靴の足音が、「タッタッタッタ」としてから、大きな一歩を踏み出す、岸を踏み切る「パーーン」とゆう音と共に、手を繋いだ二つの影は、空に向って飛び出しました。
それから・・・・、男の子と女の子は、今になっても向こう岸に着地出来ていないのです。ふたりは、今も何処かを飛んだままなのです。大人になり切れないまま、ふたりだけの世界の中を。

テルッツとワシは、こんな風に生きてきたのかもしれない。昨夜、そう思った。

風の便りに聞いた。 去年の秋、行方不明になっていたあの男の子が、数十年振りに向こう岸へ、着地したそうだ。しっかりと握られていた筈の女の子の手がそこには無く、振返れば、飛び越えてきた前の世界も無い。余にも酷い着地だったようで身も心もボロボロに傷ついて、呆然と先にある暗い雑木林を見つめているだけだったと。   つづく。
論理算命占

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