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九十九里は好い処?んじゃ、柴又は?part6

退院して帰ってきたのはいいが、右腕が全く上がらない。箸ももてない。風呂で身体を洗えない。crying テルッツの介助のおかげで、少しづつ良くなって行った。年を越す前に、鎖骨に入っていた金属棒が、取れた。ずうっとしていた鎖骨ベルトもさよならした。ただ、たまにやってくる喘息の発作には、まいった。weep  この部屋には、嫌な想い出がある。二十六年間の結婚生活の中で、最大の夫婦喧嘩をしてしまった。あまりの感情の昂ぶりのせいで、喧嘩の原因を完全に忘れてしまった。 憶えているのは、テルッツが、「もう、死ぬ!」と言って、3階の窓から飛び降りようとした事だ。焦ったワシは、「馬鹿野郎!」と言って、腕を掴んで部屋の中に引き摺り倒した。ワシは、腕力に物を言わせる事は、恥だと普段は思っている。特に恩師から「女に手を上げる奴は、最低の男だ。」と、諭されていたので、それまで手を上げた事など、一度も無かったのだ。この時、禁を破りテルッツを畳に投げ付けてしまった。恐らく、テルッツだって、投げられたのは初めてだったろう。それまでの言い合いが、嘘だったように静まり返ってしまった。テルッツの顔は、恐怖に脅えていた。泣く事も忘れていた。背中を打ちつけたショックで息も出来なかったのだろう。どれ位、時間が経ったか解らなかった。ワシだって、暴力を振るった自分を恥、自己嫌悪で何も出来ないでいた。テルッツが泣きじゃくるのを見て、ようやく事の重大さを思い知った。ただただ謝り続けた。  ようやく、なだめる事が出来たテルッツが、一言呟いた、「怖かったよー。」って。震えていた。この日、仲直りは出来たが、テルッツが又、一言呟いた、「トシチャン、怖かったよー。恐怖のあまりウンコ漏らしそうだったよー。」 これを聞いてワシは、「ワシが、本気で怒ると、そんなに怖いのか?なんという事を、仕出かしてしまったのか?もう絶対に本気の怖い顔は出来ない。」と、心に刻んだ。  テルッツだけが、好きに付け悪しきに付け、ワシを本気に出来る、この世でたった一人の人間なのだ。これ以後、ワシは、演技以外で怒る事はしなくなった。  時々、想い出話になって、この事件の事が出ると、「怖かったよー。」と、言われてしまっていた。  1990年、再び沖縄へ。前年行けなかった処へ行った。 バーベキューを食べている時の優しく微笑んだテルッツの写真が、今は、ワシの枕元にある遺骨の上で花たちと供に飾られている。 「おやすみ、テルッツ。毎日、泣いてばかりで御免ね。また、あしたも、見護ってねー。」「ほいじゃねー。」

縁結びの神様〜浅野八郎 御歩射(おびしゃ)占い〜

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